シッポザルの手の上

なんでこうなっちゃったんだ

知らん間に宗教三世になってたんだけど(1)

知らない間に宗教三世になっていた話



齢23にして宗教三世になった。

未だにその事実を受け入れられない。

 

友達とゲッターズ飯田について話していても、

「ま、運勢が悪かろうと例の宗教が救ってくれるらしいんですけどねーw」とか、

宗教学の授業を受けていても、

「ま、その新興宗教の信者ってのが私なんですけどねーw」

などと日常的に起こる宗教三世ショックに対し、草を生やして乗り切るしかない。

 

以下はなぜ私が宗教三世になったのかという顛末について記そうと思う。



・父は宗教二世

家族共有の本棚を整理していると怪しげな小冊子を見つけた。

それは書店に並ぶしっかりした造りではなく、自治体が配る年季の入ったハンドブックみたいなものだった。

好奇心から内容を見ると「救国~」とか「すべての大元の神である~」などと怪しい文言ばかりが並んでいたので、スピっては*1人に騙される父の所有物に違いないと思った。

と同時に、こんな小冊子を押しつけられたお人好しの父をからかってやろうと思った。

 

思えばそれが本当に良くなかった。格好良く言うと終わりの始まりである。

私はニヤニヤしながら「ねえ、この本何?」と尋ねると、

父は「そうそう、それは○○っていうとこの小冊子でな」という言葉を皮切りに、

 

・父が宗教二世である

・父が40代の頃偶然信徒に会い、小冊子を貰った

・子供たち(私と姉)が成人したのちに家族で入信しに行こうと思っていた

 

うわーーーーーーー知らん知らん知らん!!!!

今更になって父親が実は宗教二世とかの告白いらんーーーーーーー!!!!

昨日も、家族がいるリビングに居ながら平然とスマホでAV見てた父が!?!?!?

そのあと姉による彼氏とけんかした愚痴を聞いて、姉に説教してたけど1ミリも威厳がなかった父が!!?!?!??!?

 

衝撃が大きすぎて絶句してしまった。状況を飲み込めた後は心中では叫びっぱなしだったが、ぽつぽつと話す父に何をいっても拒絶の言葉になってしまう。ごく普通の父の知らないところが眼前に現れて、急に父親が知らない人のように思えた。

 

・父との問答

そして「知らん!知らんて!!」モードのまま家族で入信の話に移った。

その際父はこう主張した。

 

・入信している団体は入信したときにしかお布施をしないので安心。毎月収入の半分を納めなければならない、ということはない。

・入信すると輪廻転生がなくなる。最高。家族みんなそろって最高の世界に行こう

・すべての神様の大元を祀っているので、宗教という概念がない。だから宗教じゃないので安心して

 

そう言い終わると「この話もせっかくしたことだし、院試終わったら入信しにいこか~」とうれしそうな顔をした。

実際の当事者を前にすると、架神恭介の「完全教祖マニュアル」や月刊ムー、筋肉少女帯などで培った宗教耐性は砂のように崩れていった。私の半端なサブカル力では、何一つ役に立つことことは無かった。

 

ただ、私は大学で仏教関係の勉強している。同年代と比べると仏教への愛着もあるほうなのではないか、と自負している。それゆえ一応抵抗しとこうと思い、

 

「別に輪廻してもしなくても、どっちでもいいけどな~」

「私一応仏教関係の勉強してるんだがな~」

「父さんの信仰は大切に思ってるけど、私の仏教への思いも大切にしたいんだけどな~」

と「~」を多用して言葉尻を柔らかくし、恐る恐る主張を述べてみた。

 

しかし父は手強かった。

「この宗教はすべての宗教を含んでいるので、仏教を信じてても全然オッケー。参拝もお葬式も普通にやってくれたらいいから。」

「お父さんは、みんなに輪廻するという苦しい思いをさせたくないだけだから。入信するだけでいい」

 

リビングで堂々とAVを見ようと、一ミリも威厳がない説教をしようと、私にとっては家族の一員であり、父親である。仲が悪くなるのは本意では無い。それにもし私が入信しなければ、父親は死ぬ間際に大変な後悔をしてしまうのではないか。頭も悪けりゃ要領も悪い遺伝子の残りカスである自分が出来ることは、快くあの世に送り出すことだけではないか。

私は折れた。父との関係性と自分のプライドを天秤にかけ、結局父を選んだ。

 

その後も院試の勉強もしながら「あ~この院試終わったらよくわからん宗教入んのか。勉強から解放された瞬間に入信?なんのカウントダウン?」と口をとがらしていた。

ストレスで顔面がニキビだらけになり、拍車をかけるように体中にじんましんが出た。「これが本当のポルカドットマン」などと訳のわからないことばかりほざきながら、ぼんやりしていた。



・うるせえ

 父の説得の中で印象に残っている言葉がある。

「○○(私)は小さい頃から周りからずっと浮いてたでしょ。お父さんも思春期くらいに入信してからは、『俺は○○教に入ってるから周りと違って当たり前だし、それが誇らしい』と思えるようになった。だから、○○(私)も入信して周りと違うことに誇らしくなってほしい」

 

うるせえ~~~~!入信せんでもこの調子でずーーーーっと死ぬまでやってくで大丈夫です!これ以上余計な荷物背負わさんでくれ~~~!てかそこまで社不じゃねえわ!!!

*1:スピリチュアルに被れること